曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

松竹梅に思う [No,1501、5月11日〜5月17日]

三重県尾鷲市 光明寺住職 佐々木秀玄 老師

 私の結婚式は、仏前結婚で挙式をあげました。その時式師様が、松竹梅のお話をして下さいました。当時はまだ若くて、おめでたい席に付きものの話だろうと、深く考えてもみませんでした。それから数十年経って今、その言葉の深い意味が分かってきました。
 結婚おめでとうと言っても、人生苦から逃れたわけでもないし、卒業おめでとうと言っても卒業しただけでは楽になりません。古の人は芽出度いと言う事を、松竹梅によってその教えを残してくれたのです。昔の人の知恵には驚くばかりです。
 松・八風を受けて動ぜず岩(巖)頭の松。竹・竹に節有り節から芽が出る。梅・梅は寒苦に花が咲く。松は人生の波風(八苦)にも負けず、岩の小さな隙間にがっちりと根をはって、びくともしないで益々緑てい葉を茂らせた姿です。竹は苦しんで育つ節から、芽を吹き出している姿です。梅は苦しい人生の中に、にっこりと笑って、花を咲かせている姿です。決していばった様な花ではありませんが、古い枝で清らかな香りを放っています。以上のことから、芽出度いと言うことは、うわついた、華やかな幸いっぱいと言う意味から、遠い事が分かります。
 道元禅師様は「梅は早春を開く」とお示しになっております。ところが私達は「梅は早春に開く」と言うふうに感じているのではないでしょうか。禅師様の「早春を開く」と言うお言葉の様に、自らをもって人生を切り開かなければならないと、お示しになっているのではないでしょうか。
 自分の心の床の間に、松竹梅を飾ってその意味を考えてみたいものです。

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