私がお守している寺を囲むように里山があります。その山も季節の移ろいとともに、その色と姿を変えています。私が子供の頃にはその山もほとんど松一色でした。それは温帯特有の雑木が燃料として伐採され、松のみが残されていたからです。しかし、今はその松もほとんど見かけることが出来なくなりました。それには二つの原因があります。その一つは松食い虫の異常発生です。最初の頃は毎年のようにヘリコプターによる薬剤空中散布が行われていましたが、今はもう行われなくなりました。薬剤散布だけではもう虫害をくい止められないのと薬害の心配によるものと思われます。今一つの原因は燃料が薪や薪木からプロパンガス等に変わったからです。そして今里山は松以外の温帯特有の広葉樹が主力となりました。これがこの山の本来の姿なのでしょう。四季折々に微妙にその色を変え季節の移ろいを感じさせてくれます。道元さまは「春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり」という詩を詠まれました。これは四季のそれぞれの姿こそ森羅万象の語らいであり、悟りそのものであるという道理、諸法実相の教えを詠われたものです。そしてこの里山の姿こそ人の計らいを越えたものではないでしょうか。
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