曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

無事是れ貴人 [No,1504、6月1日〜6月7日]

静岡県浜松市 東光寺住職 水谷明嗣 老師

 「無事」に過ごすと言うと、何だか危ないこと厄介なことを避ける、消極的な行動とも取られそうな言葉です。しかし、悟りの境地では「意図的」にしない、言い換えれば、わざとらしくせず、あくまでも自然体で無意識の内にあらゆる動作をしてしまいます。つまり、修行をするのも、ボランティアをするのも、何かの為にとか、認められたいとかの意図を持たずにするのです。
 ここで「無事」に似た例を紹介します。今年1月27日、福岡県のコンビニに強盗が入りました。店員に刃物を見せて「金を出せ」と迫りました。しかし、58歳の店員が何も言わず、じっとにらんだ所、強盗はひるんで逃げ出したそうです。この店員は前にも強盗にあっているので、落ち着いて対処できたと語っていました。結局、店には損害がなく、店員もけがをせず強盗も未遂に終わった訳です。
 更に禅宗で言う「無事」とは、一切の計らいを捨てた安らかな自分の心を言っています。目は見ようと意識して見ているばかりではなく、耳は聞こうと常に意識している訳ではありません。このような自我意識を超えた自然体の所に、仏さまの境地があるのです。
 さて現実には、何が起こるか分からない、困った世の中に居ます。特にこの6月は、雨の日には車の窓も曇りがちになります。自分もケガせず、他人にも迷惑を掛けず、心の目と耳を研ぎ澄ました自然体に中で、皆が積極的な「無事」の生き方を心掛けることは、仏さまの広くやさしい心に沿うものと思います。

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