涅槃経に「一切衆生悉有仏性」とあります。生きとし生けるもの、ありとあらゆる存在は仏様だというのです。
私が北海道に在住している時に、北海道教育大学の心理学を担当されていた坂東教授の講義を受け、その中で札幌のある小学六年生の坂口真由美ちゃんの作文を引いて話をされたことがいたく印象的でした。真由美ちゃんは、お母さんが働いて生活をしている母子家庭です。作文のあらましはこうです。
お母さんはある会社の掃除婦をしています。帰って来ると首をしきりに動かしています。きっと昼の仕事で肩がこっているのでしょう。私は楽にしてあげたいと思って、「お母さん、肩を揉んであげましよう」と言うと、お母さんは喜んで「すまないね、じゃあお願いしますよ」と言いましたから、お母さんの肩を揉んでやりました。始めは、「上手だね、いい気持ちだよ」と言っていましたが、急に黙ってしまいました。いい気持ちになって眠ってしまったのかと思って、お母さんの顔を覗き込むと、つむっている眼に涙が溢れ、それが落ちているのです。これを見て、こんなささやかな行いが、このようにお母さんを喜ばせるのかと思うと嬉しくてたまりません。そして、こんなに苦労をして私を育ててくれていると思うと、今まで我儘を言っていたことが恥ずかしく申し訳なく思いました。これからは、我儘を言わないように、心配かけないように、そして、お母さんを大切にしょうと固く心に誓いました。というのです。
苦労をいとわず、子供の成長をただひたすらに望んで働いているお母さんも仏様でありますが、お母さんの涙を見て、我儘言って申し訳ない、二度とそういうことのないようにと誓った真由美ちゃんもまた仏の心に目覚めたからに外なりません。このようにみんながみんな仏の心を持っている。このことに目覚めなさいというのが仏様の教えなのであります。
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