世の中には「そんな馬鹿な」と一蹴されてしまう話が沢山あります。
しかし、真実の信仰、純な信仰ということになれば、単に「そんな馬鹿な」と言い切ってしまう訳にはいきません。
次の話もその内の一つです。
愛知県の香嵐渓という名所から、更に山深く入った所に塩の沢という所があります。そこに昔、七三郎という人がおりました。貧しい農家の生まれで小さい時から苦労を重ねましたが、でも熱心なお念仏の信者です。この七三郎39歳の秋のこと、突然空一面に黒い雲、生あたたかい風と共に大粒の雨、これは正に台風です。その時です。新しいむしろと竹竿2本を持って妻と一緒に向いの山頂へ登りました。「この強風では定めし宗都のご本山のお堂には殊の外強い風が当たることであろう。急にはお手伝いにも行けないが、せめてこの山頂でむしろを張って風除けをしよう」と峠の大岩にしがみつき妻と体を寄せ合い、2本の竹竿にむしろを張りつけて一心不乱にお念仏を唱えて台風の収まるまで立ち続けたそうです。この話がいつの間にかその近辺に広がり、ある人は「そんな馬鹿な」と罵り、ある人は「ありがたい事だ。それに比べて我々の信心はまだ足りない」と賛嘆した人とに分かれました。
常識という人のモノサシで考えれば、こんな馬鹿な話は通用しません。しかし、純な信仰という観点からみれば考えさせられる話です。これをある有名な人は「馬鹿で馬鹿でない話」と申されますが、何か胸を打つ奥深いものを感じます。
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