曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

生きて生かされている私 [No,1526、11月2日〜11月8日]

愛知県名古屋市 医王寺住職 中村玲心 老師

秋も深まり冬の気配が感じられる頃になりますと空気も凛と澄み渡り木々の紅葉は私共の気持ちにしっとりと落ち着きを与えてくれます。現代社会の時間に追われる慌ただしさを諭すかのように自然はゆったりと移っていきます。この時節私には必ず口にする句があります。「裏を見せ表を見せて散る紅葉、裏を見せ表を見せて散る紅葉」
 この句は良寛様の句であります。病床に有り最後の時を迎えている良寛様が詠まれたものです。天然自然のなかでこだわり無く生きられる良寛様のお姿は、当時からまた今に至るまで人々の心を引きつけるものがあります。天衣無縫融通無碍なこだわりのない良寛様の心に対するときその極まることのない悠久を感じることがあります。この悠久こそが自然の営みに仏様の御慈悲を感じられた良寛様のお心でありお姿なのです。私たちはとかく自分で自分のことを追い込み、そして窮屈にします。でも自然は私たちの思い計らいとは関係なくちゃんと営んでおります。人間の生き方も時には調子よく時には具合悪くそれはそれで自然な営みなのです。裏を見せたり表をみせたりしてたゆたう紅葉のように。時にはあくせくしようと、そのあくせくに、あくせくすることはないのです。私たちはこの自然の一部でありそこで生きて生かされているのです。その事実をこの歌で良寛様は優しく説かれているのです。「裏を見せ表を見せて散る紅葉」

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