曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

沢木興道老師のことば [No,1529、11月23日〜11月29日]

愛知県一宮市 成福寺住職 久馬慧忠 老師

かつて沢木老師は『仏教というものは「ああ人間に生まれてきてよかった」ということを教えるものである』と端的明確に申されました。こんなことは、普段私達は当たり前のこととしてさほど真剣に考えたことはありません。しかし、よく考えてみれば誠に不思議なことです。私は今、心臓は万全ではありませんが、それでも昼も夜も休みなくよく働いております。しかも私の思慮分別とは全く関係なく動いている事実をみて、なるほどこれは私が生きているのではなく、正に生かされているということを実感させてもらっております。
 そこで、この生かされている私がどのようにすれば、人として正しい道を歩むことが出来るのかが大事なことです。いろいろな方法はありましょうが、永平寺の道元禅師は、何も考えないで、ただ座る坐禅を示して下さいました。これは人のモノサシの世界ではなく、仏のモノサシの世界です。時間の長短には関係なく、また正式な坐禅でなくとも、椅子坐禅でも時には正座でも結構です。何も考えないで、ただ座ることが大事なのです。沢木老師はまた、「タダ坐禅・タダ念仏―このタダということが、凡夫にはツマラナク思える。凡夫はいつでも何ぞツリが欲しいものじゃ」と申されました。ツリを売り物にし、ツリを求める宗教も沢山ありますが、道元禅師の坐禅とは始めから次元が異なります。この仏のモノサシのタダの世界こそ、大宇宙、大自然とともに一体となれる最高の方法なのです。また、お袈裟の大家でもあった沢木老師は常に「袈裟は布の成仏である」とも申されました。仏像には石仏・木仏・金仏があるように、お袈裟は布の成仏した姿だというのです。正に布仏です。これもじっくりと味わってみたい言葉ではありませんか。

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