曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

命について  [No,1530、11月30日〜12月6日]

愛知県田原市 普蔵院副住職 河合佑樹 師

人前で話すということは何しろ難しい。不特定多数を対象にするならなおさらだろう。この話に不快感を示す方もいらっしゃるだろうが大目にみてもらいたい。
 みなさんは命というものをどう認識されているだろうか。かけがえのないもの。尊いもの。生命活動をするもの。魂。漠然としているが一般的にはこのような認識ではないだろうか。
 私は命とはまさに自分だと考える。自分こそが命であり、その他を自分と同列に認識することは容易ではないだろう。
 なぜなら人は生きるだけで無数の命を奪っているからである。それは家畜であったり害虫であったり、植物も含まれるかもしれない。無論我々人間もその奪われるうちに含まれている。
 そしてそのなかの幾つかは奪うことによって罰せられるものもある。幸いなことに人間の命はその中に含まれており、一方的に奪うと罰せられ、奪われにくくなっている。
 例えば所有権のある生き物を殺傷した場合、器物損壊罪で罰せられるケースが多い。便宜上動物愛護法というものもあるが平たく言えば言い方を変えただけのようだ。
 しかし害虫や害獣を殺傷する分には処罰の対象にはならない。アリやゴキブリ等殺すことに何のためらいもないだろう。
 1970年代の日本には交通戦争という言葉が生まれる程交通事故による死亡者数が多かった。その数は17000人を超える。しかし車が無くなる事はなかった。17000人の死亡者よりも移動手段としての便利さをいまも尚選択し続けている。
 今現在では交通事故による死亡者数は減り7000人程度になっているがそれでも少ないとは言い難いだろう。
 自殺者数の増加も昨今問題になっている。平成10年には3万人を超え、現在も33000人前後を推移している。さらに行方不明者の内何割かはそのうちに含まれるだろう。これはなにが原因かとは一概には言えないが、インターネットやテレビ、小説、漫画などのメディアによる所が大きいのではないだろうか。何しろ日本だけで1日100人近くの人間が自殺しているのである。
 アフリカでは1日20000人程の子供が餓死している。それに比べれば何ということのない数字に思えるかもしれない。
難病にかかった我が子を救うのに何千万という寄付を募る人がいるが、そのお金があればアフリカで何万人の餓死者を救えるだろうか。
 様々な例を挙げたがこれらは皆命であることに間違いはないだろう。
 さてここで皆さんはこれらを自分に置き換えることができるだろうか。自分ではなくとも家族や友人、愛するペットに置き換えることができるだろうか。
 命は命である。それ以上でもそれ以下でもない。生き物を食べるということ。それらに生かされているということ。自分をとりまく全てに感謝せねばならないということを忘れてはいけない。
 世間に氾濫する情報に惑わされて命を粗末に扱ってはいけない。
 みなさんもふとした時にそんなことを感じていただきたい。

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