三月は天地自然が春の到来を感じさせ、花ほころび鳥うたい、万物に喜びを与えてくれる好時節であります。
私たち日本では、この時節にさまざまなことが行われます。今年の春彼岸のお中日は三月二十一日で祝日です。そしてこのお中日を中心に前後七日間を春の彼岸と申します。この時全国の寺々で彼岸法要が行われます。
皆様ご存知のように春秋彼岸のお中日には、お日さまは朝真東より上り、夕べには真西に沈みます。この日お日さまは天道の中央を通り、昼と夜との長さが同じであります。お日さまは仏教で申すなら天道中央大日如来さまであり、万物の根源であります。古来人々は西方には阿弥陀さまを中心に、極楽浄土の世界があると信じられています。
さて、人間は勝手なものでありまして、自分が現在あるのはご先祖さまや.こ両親、人々のお陰であるということを忘れ、「俺が」「我が」という自己中心的な気持ちが強くなり、ご先祖さまご両親、さらには天地万物のお陰であるという、感謝の心を忘れがちであります。
そこで日頃忘れがちなこの心を呼び覚まし、報恩供養をするのがお彼岸であります。「手を合わせ 目を閉じて 思い思われ 今はなつかし」
お彼岸に多くの人々は、亡き人々の在りし日をしのび、感謝報恩の気持ちでお墓やお寺にお参り致します。
彼岸とは悟りの世界を意味し、仏さまや亡き人々のいるあちらの世界を意味します。そして私たちのいる、こちらの世界を「此岸」といいます。此岸には人間の煩悩ゆえのさまざまな苦しみが渦巻いています。この煩悩の炎を吹き消し、正しい生き方をするための修行として「六波羅蜜」という六つの修行があります。
その六つとは(布施 持戒 忍辱 精進 禅定 智慧)であります。
*布施とは私利私欲を離れ、見返りを求めず、貪りの心を捨て、施しをすることであります。
*持戒とは戒律を保つということで、天地宇宙の道理に背かないような、人間としての正しい生き方、戒めを守り、清らかに生きることであります。
*忍辱とは堪え忍ぶということで、己を制する心を大切にし、相手の立場を考えて、時には堪え忍び、我慢することを意味します。
*精進とは現在・今を大切にして精いっぱい生きることであります。
*禅定とは心の動揺を抑え、左右に偏らず、とらわれのない安定した心の状態を意味します。
*智慧とは知識理論ではなく、天地自然の道理にしたがった、仏さまの智慧であります。この智慧にしたがった生き方をすることを意味します。
お彼岸に、人々がこれらの修行をすることによって、亡き人へのこの上ない供養となると思います。更にいうならば此岸が平和な楽土、極楽浄土となれば素晴らしいことでありましょう。
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