曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

これでいいのだ [No,1555、5月17日〜5月23日]

愛知県知多市 大龍寺住職 野々村 晴之 老師

テレビのコマーシャルから、懐かしい言葉が聞こえてきました。
 「これでいいのだ」これは今は亡き、漫画家の赤塚不二夫さんが、作品の中で用いたセリフです。
 私たちは、事がうまくいかなかったり、つらいことがあったりすると、ついつい人に対してイライラしたり、自らの現状に疑問を抱き、自暴自棄になってしまうことがあります。
 「いのちの大切さ」を知らせるこのコマーシャルは、「あなたでいいのだ」と題されていました。
 その内容は
 「これでいいのだ」この言葉をつぶやいてごらん、そうすれば世界は案外笑いかけてくれるから。
 あなたの人生は、一度きりのもの。
 あなたの人生は、あなただけのもの。
 どうかあなたの人生を大事に生きてほしい。
 あなたはあなたでいいのだ。
 このコマーシャルには、多くの人が共感を持ったとの意見が寄せられていましたが、皆さんはいかがでしょうか??
 禅の教えでは、物事を「あきらめる」という事に要点をおいています。
 あきらめるというと「もう希望や見込みが全くないと思って放り出すとか断念する」と理解されてしまいますが、ここでの「あきらめ」は「明らかに知る・明確にする」といった意味なのです。
 生まれ死んでいく、この人間の一生の中で、日々どのように、生きていくかを明確に考えていくことが、代々伝わっているお釈迦さまの大切な教えです。
 お互いが関わり合い支えあっている世の中です。
 ゆっくりと、まず自分と周りの人々のことを考えてみることが、互いに生きていく、私たちには必要なことです。
 全てが、自分の思い通りに進むわけはありません。
 むしろ生きていくには「自分の思い通りにいかないのが当然」と覚悟をしなければ、ならないのでしょう。
 かといって、全てを放り投げてしまっては、身も蓋もない事になってしまいます。
 「あなたはあなたで良い」というのは「わたしはわたしだけでいい」ということには繋がりません。
 それでは、身勝手な考えになってしまいますね。
 「これでいいのか?」と常々、自らに問いただしてみることも必要なのです。
 支えあいながら生きていく私たちにとって、時には疲れてしまい、自分にも他人にも悲観的になってしまうこともあります。
 「これでいいのだ」というつぶやきは、自分の中で物事を再出発するときに、自らに勇気と希望を与えてくれるきっかけとして、心の中でささやきたいのです。
 わたしは「これでいいのだ」 あなたも「これでいいのだ」

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