近年、日本においては高齢者の自殺が増える傾向にあります。高齢者の自殺の原因は、病気によるものが大半を占め、次いで経済的な理由、そして家族間の問題となるそうです。また高齢者の自殺の七〜八割は、うつ病だったというデータがあります。
体が不自由となり、人の手を借りなければ生きていけなくなった。家族に迷惑をかけ、人の役にも立てず、楽しみもなくなってしまった。連れ合いを亡くすなどの孤独感や喪失感から、うつ病にかかる可能性が高いそうです。そしてうつになると、全てのことに悲観的となり、生きている意味を見出せなくなり、自殺を考えるようになるそうです。
もし、本人が「死にたい」と言いだしたとき、家族や周囲の人はどう対応すればよいのでしょう。医学的な治療も必要ですが、本人が訴えたいのは、心の叫びを親身になって聞いて欲しいということです。決して放って置いたり、逆に励ましたりせずに、その気持ちに寄り添いじっくりと話を聴いてあげる。丁寧に受けとめて共感してあげる。ストレスを除き安心させることが大切です。
「愛語」という言葉があります。慈しみ、愛する心で言葉をかける。母親が赤ちゃんに接するのと同じように、やさしく思いやりの態度で言葉をかけることです。
私たちのこの命は、ご先祖様に守り伝えていただいてやっとこの世に生を受けたもの、いろいろなご縁の中で願いがかけられた尊いものなのです。自分の命は自分の力で生きていると思いがちですが、実は多くの命との関わり合いの中で生かされて生きているのです。いずれ寿命がくれば死んでいかねばなりません。それまでは生きていて欲しいと、願う人がいるのです。そんな話を、慈しみの心でしてあげましょう。
道元禅師は、愛のある言葉を口にするとき、自分自身の心にも愛が育まれると教えています。家族も大変つらい思いをしますが、一緒に成長できるという、お蔭さまもあるのです。
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