皆さんは「縁」という言葉を御存知のことと思います。家族や親戚の絆をあらわす血縁、ご近所さん、お隣さんとのつながりを示す地縁、クラスメートやサークルあるいは信仰のお仲間のつながりを示す同胞縁、国境を越えた人と人とのつながりの絆を示す言葉としての地球縁。
この縁という言葉は、仏教では重要な意味をもっていましたが、今、日本人の悲しい姿を示す言葉として使われております。無縁死、無縁社会というような言葉であります。家族という関係性を失った老人が、看取る人もないなかで人知れず死んで行く、本来親のあたたかいふところで育つべき子が、親から虐待されて死んで行く。
人と人との出会いという関係性を仏教では「縁」という言葉であらわし、この縁の中で人が生きてゆく場所が生まれてくることを教えた言葉でありました。
ゆたかといわれる私たちの国に毎年三万人以上の人々が自殺し、うつ病の人たちが百万人以上もおります。そして、ゆたかといわれるなかで、「食べ放題、飲み放題」とか「勝ち組、負け組」というみにくい日本語が生まれております。私たちの国が、ゆたかで貧しい国になっていることに悲しみをおぼえます。
釈尊は人間の五欲について説明されるなかで、名誉欲と財産欲のふたつは、手に入れば入るほど、欲望が益々ふくらんで終わるところがないと教えられました。釈尊が最後の説法において説かれた八つの教えの第一に「少欲知足」がありました。ものへの欲求で足ることを知り、人とのゆたかな縁という関係性をつくりたいと思うのであります。
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