曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

川の石のように [No,1576、10月11日〜10月17日]

愛知県豊川市 正法寺住職 草間寛之 老師

今年の四月に私の住んでいる町で恐ろしい事件がありました。その事件とは、その家の三十歳で部屋に引きこもりの長男が家族に勝手にインターネットを解約された事に逆上し、家族全員を刺し家に放火するという事件でした。
 私はこの事件を聞いた時に、子どものとき良く親に『友達をたくさんつくりなさい』と言われた事を思い出しました。この事件を起こした犯人は十年以上もほとんど部屋に閉じこもっていて、家族とすら会話が無かったという事です。人は人と接してその中で揉まれて人らしく育つのだと思います。
 私は永平寺に修行へ行ったとき人付き合いが得意では無く自分の事だけで精一杯でした。あまり他人の事に構わずに自分の事だけをちゃんとやろうというような態度だったと思います。
 しかしそんな態度だった私に何度も何度もぶつかってきてくれた同安居達がいてくれました。最初はしつこく感じるだけでしたが、徐々に心を開いて接する事ができるようになりました。それからは皆で一つの事をやり遂げる事の楽しさや嬉しさを感じる事ができるようになりました。今では年に一度も会えないのですが、たまに電話で話したりするとその時の話で長電話をしてしまったりします。今の自分があるのはそういった周りの人達のおかげだと思います。
 私のお寺の境内には昔近くの川がよく氾濫をした為に丸い角のとれた石がゴロゴロとしています。その石は最初から丸かったわけでは無く川の流れによって石と石がぶつかりあって角が取れて丸くなっていきました。その石のように人も人と接する事によって丸い形の角のとれた人になっていくのだと思います。カッコをつけずに素直な気持ちで傷つく事を恐れずに人と接してみてはいかがでしょうか?

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