曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

一粒の命 [No,1586、12月20日〜12月26日]

静岡県沼津市 大泉寺住職 小島健布 老師

今年の夏の初め。毎年恒例、小中学生のこども達を集め、一泊二日の合宿をしました。坐禅や合掌の仕方、読経、お寺の食事作法など、こどもたちの身心を鍛えると同時に、夏休みの思い出にと、師匠と二人、楽しみながら行っていました。
夕飯はカレーでした。
 食事の作法として、禅寺では当たり前のことなのですが、食後、食べ終わった器にお湯を入れ、たくわんなどを使ってきれいにし、そのお湯もまた捨てずに飲み干します。
 もちろんカレーであっても同じように、お湯できれいにして、それを飲み干すよう、こども達に言いました。
 毎回合宿に参加しているこども達は、当たり前のように、そうでないこども達も、はじめはびっくりした顔をしながらも、何とか飲み干そうと努力していたのですが、小学校低学年の男の子一人だけが、お湯の入った器を見つめたまま、じっとしていました。師匠はそれを見て「飲みなさい」と言うと、「汚いから飲みたくない」と答えたのです。
 それを聞いて、師匠は、「そういうお前の心が汚い!」と大声で言った後、「お湯で薄めたカレーなどおいしいものではない。しかし、一粒の米も、器にこびり付いたカレーもまた大切な命。その大切な命は、すべて頂かなくてはいけない。だから、その命を無駄にしようとするお前の心が汚い!」と諭しました。
 我々人間の命も、一粒の米の命も掛け替えない尊い命。その大切な命をいただいていることを忘れてはいけないのです。

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