曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

年頭にあたりて [No,1588、1月1日〜1月9日]

教化センター統監 愛知県田原市 法蔵寺住職 神谷道宣 老師

月日は川の流れのように一瞬たりとも止まることがありません。曹洞宗を中国から伝えられ、永平寺をお開きになった道元禅師さまは「行陰は矢よりも迅かなり、身命は露よりも脆し、何れの善巧方便ありてか過ぎにし一日を再び還し得たる」と時の流れの速きこと、そして今を大切に生きなけれはならないことを読かれました。
 私は除夜の鐘の音を聴き、過ぎし年の自己の行いに想いをはせるとき、如何に空しき時を過ごしたことかと反省しきりであります。光陰虚しく渡ることなかれ、今年こそはと身の引き締まる思いになります。
 さて、平成二十二年は国内外でさまざまな出来事がありました。猛暑の夏、政治・外交の問題、先の見えない世界的な経済の問題、内外における多くの人々の人命軽視の問題等暗い出来事の多い年でもありました。世界的異常気象は猛暑・ゲリラ豪雨等の原因になっており、地球温暖化がその一因とも言われています。
 喜ばしい出来事としては日本人根岸・鈴木両氏がノーベル化学賞を受賞されたことであります。両氏の研究は有機化合物の合成についてであり工業・医学に多大な貢献となっています。これは日本人に勇気と希望を与えました。
 さて、環境の問題に関して我が国は、それなりの努力をしていますが、スローガンの実現への一層の努力を期待します。 特に今年は名古屋市で生物多様性に関する締約国会議が開催されました。今や我が国民も世界の人々も生物多様性を含め、環境問題に本気で取り組む時が来ました。内外を問わず格差社会の出現は富裕と貧困が複雑に絡み合い、さまざまな問題が生じております。私たち仏教徒は世界の人々が自国・自己の利益を越え、互恵の精神で理解と協力が出来る社会の実現を念じます。
 曹洞宗ではご存知のようにお釈迦さまの教えに基づいて「人権、平和、環境」の三大スローガンをかかげています。お釈迦さまはおよそ二千五百年前「天地万物、この世に存在するものはすべて平等であり、存在意義があって存在し、尊いのである。万物は互いに天地の道理に従って存在し、人間のみが尊いのではない。」と人間至上主義を否定されました。
 年頭にあたり、人種宗教を問わず世界の人々が身心ともに健やかで、平穏な日暮しが出来ますよう心より念じ、年頭のご挨拶とさせていただきます。

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