私の住む伊豆の河津町で【河津桜祭り】が今年も開催されました。その間約一ヶ月の花見客は平成十一年から十三年連続で百万人を超えたそうです。
今では静岡県の3大イベントに成長し、この小さな町の名前が桜の名と共に全国に轟くほどとなりました。寺の檀務の傍ら町の観光協会で役員を務める私はこの河津桜満開の時期になると次の禅語を思い出し感慨を新たに致します。
それは「柳は緑、花は紅」という禅語です。河津桜の花は濃い桜色に咲いて花持ちが良く、新芽はどの草木より早く出て若葉の新芽が先を競うように茂りやがてあたりを緑一色となす桜です。「柳は緑、花は紅」の禅語はすべてのものはそのものの本来かけがえのない特色や真理をもっていることをたとえている言葉であります。
道元禅師は道元禅師和歌集の中で【春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえてすずしかりけり】また【峯の色、渓の響きもみなながら わが釈迦牟尼の声と姿と】と自然をたとえに仏の教えを歌っておられます。宋への留学から帰国した道元さまは日本の瑞々しく美しい自然に触れ自然そのものの現れ、自然の摂理がそのままお釈迦様の教えであり天地の真相であると示されました。
お釈迦様は遠い昔に亡くなられ、その教えである仏教も滅んでしまったかというと決してそうではない。峰々の景色も、谷川の水音もみな、生きたお釈迦様の御姿であり、御声であると知らねばならぬと教えておられます。
池の面に咲く蓮の花はいかにも清く美しい。しかしその根元はどろどろの泥田です。蓮はこのどろを避けることなくこの中に根を張り養分を吸収して美しい花を咲かせています。
人間界も大自然のふところに抱かれながら多くの矛盾を抱えています。またこの度の大震災のように自然の猛威の前で無力を思い知らされ、大災害で苦しめられますが、その中から力強く立ち上がり新たな調和と秩序を目指して発展していかねばならないと思うのです。どんな花を咲かせることができるのか課題を抱えた今年の春でありました。
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