曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

礼拝の心構え [No,1614、7月4日〜7月10日]

愛知県日進市 龍淵寺住職 伊藤正見 老師

皆さんは、お寺で仏さまに対して合掌し礼拝する時、何を思っているでしょうか。「病気になりませんように」「家族が無事に暮らせますように」「商売が繁盛しますように」等というように、たいていの人は何かしらのご利益を願って手を合わせているのではないかと思います。
 しかし、仏教を開いたお釈迦さまは、ご利益を得るために神や仏を礼拝せよとはどこにも説いてはいません。それでは、どのように礼拝すべきであると説いているのでしょうか。お釈迦さまが説かれたお経に「六方礼経」(ろっぽうらいきょう)というものがあります。このお経は資産家の父を亡くしたシンガーラという名の青年に、父親の残した財産を失わず人間らしく生きるために守るべきことを具体的に説いたものです。この「六方礼経」の「六方」とは、東西南北の四方向に上下を加えた六つの方向を指します。そして、その六つの方向にそれぞれ、東は父と母、西は妻と子、南は先生、北は友人、上は修行者・宗教者、下は仕事仲間を配置し、そのように六方向に配置された人々を思いながら感謝するのが礼拝であると、お釈迦さまはこの「六法礼経」の中でシンガーラ青年に説いているのです。つまり、現世利益の為の礼拝、無病息災、家内安全、商売繁盛など祈願する意味の礼拝を教えたのではなく、己の心を調え自分の周りの人々を思い、その人たちとの円滑な関係を実現するように誓うのが礼拝であると教えているのです。
 これら六方向に配置された人々は直接的・間接的に今までの私たちを支えてくれています。また、これからの私たちの支えにもきっとなることでしょう。そのような人たちに対して感謝と報恩の心をもって礼拝していくならば、私たちは自ずと幸せな暮らしが送れるようになるのではないかと思います。

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