私が小さい頃好きだった絵本に『あんぱんまん』があります。アニメのデザインと違い、原作は、継ぎはぎのマントに無表情だったように思います。そんな風貌でしたが、私は一生懸命クレヨンでお絵かき帳に『あんぱんまん』を描きました。私のヒーローでした。
今、あんぱんまんの事を調べてみますと当時の設定では貧困に苦しむ人々を助けるという内容だったのですが、小学校以下の児童にとっては難解という事で編集部や批評家、幼稚園の先生などから酷評されたといいます。しかし30年たった今では、子どもたちに絶大な人気を誇る国民的キャラクター『アンパンマン』となりました。
皆さんご存知のように、彼は空腹の者の前に現れ、その『あんぱん』で出来た顔を食べ物として与え、去っていく。顔を分け与えることで自分の力が落ちると分かっていても、目の前の人を決して見捨てることはありません。また、悪役である『バイキンマン』たちに幾度となく窮地に追い込まれても決して屈することなく戦い、最後には寛大な心で彼らを許すというお話です。
さて、人が生きていくために『食事』は欠かす事が出来ません。それは修行中の僧侶にとっても同じ事です。曹洞宗をお開きになった道元禅師様は修行する際の食事を大変重視しておられました。その著書『典座教訓』の中で、食事を作る者の心得として『三心』という三つの心得を示されました。
一つ目は『喜心』人の喜びを自分の喜びとして人の為になる行いを喜んでする心。
二つ目は『老心』父母の心です。親が子を思うように他の人を思いやる心。
三つ目は『大心』山の如く高く大きな心、海のように広く深い心、もの事をありのままに見つめるこだわりの無い心。
この三つの心得が私には、小さい頃に好きだったアンパンマンの精神と通ずるものがあるように思えます。
私はこの『三心』というのは料理を作る者のみならず、人が人の事を考え行動する際の心得としても通ずるものだと思います。私たちも普段の生活の中で『喜心・老心・大心』を心がけて人に接し、思いやりのある生活をしていきたいものです。
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