曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

微笑みの国の合掌 [1624 H23年9月12日〜9月18日]

静岡県浜松市  養源寺住職  水野大器 老師

 昨年、私はタイ国の仏教遺跡を巡拝する旅行に参加しました。一週間足らずでしたが、その印象は深く、心が洗われた気がしました。温かい微笑み、豊かな果物、あつい信仰心、王様に対する尊敬と敬愛の念、どこへ行ってもお寺があり、たくさんの老若男女が集い、祈り、瞑想に励んでいる。オレンジ色の衣を着たお坊さんとよく出会う。タイは、大変な仏教国だなと実感しました。タイの生活習慣で特に印象に残っているのは、合掌で挨拶をしていることです。いろいろなサービスを受け支払いの時、バザールで値切って買い物をした時も、背筋を伸ばして合掌で「サンキュー」と挨拶をする。女性ならさらに膝を折って「ありがとうございました」と挨拶をする。損した得したといった感情や、サービスの良し悪しといったとるに足らない考えが、スーッと消えていく不思議な感覚を覚えました。
 タイの人々は、生活の中や心の中に深く仏教が染み込んでいて、お互いに支え合いながら、それぞれにいっぱいいっぱいに生き、今あることに喜びを感じ、あらゆる物に感謝し、合掌している様子が伺えました。
 昨今、環境破壊、戦争や貧困、いじめや虐待など諸問題で社会は混迷しています。これらの問題の根底に「自分さえ良ければ」という人間の身勝手さ、傲慢さを見落としてはならないと思います。もし全ての人々が、生きとし生ける全てに、自分と同じ仏の種を持っていることを認め合い合掌しあえれば、諸問題は解決の方向に向かうのではないでしょうか。
 私たちは、手のひらと手のひらをあわせる合掌に、他の人の仏性を拝み、自分の仏性を拝み、山川草木の仏性を拝み、仏様の心を加えて参りたいものです。

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