曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

お陰さまと御先祖 [No,1630 H23年10月24日〜10月30日]

静岡県富士宮市 萬松院住職 吉田宏得 老師

私は、曹洞宗国際布教師の任を頂き、南の島ハワイで15年余り精一杯勤めさせて頂いて、3年ほど前に帰国しました。ハワイにも曹洞宗の寺院が10ケ寺あり、一世紀を過ぎる歴史を刻んでいます。日系も3世4世の時代に入っていますが、しっかりと曹洞宗の伝統は受け継がれています。しかし、キリスト教文化を原点にする英語を用いての布教では、時には予期せぬ質問もあります。キリスト教では、人は神の下に生まれその神との約束を守り、神に感謝するとの教えが、日常のあらゆる場面や文化の中に浸みています。ある時、「なぜ仏教では先祖祀りをするのですか?」と云う質問を受けました。そこで、こんな話をしました。
「朝起きて顔を洗います。特に女性は男性よりも入念に、またお風呂でも手足やお腹は目につくので、汚れを綺麗に洗い流します。しかし、背中は体の前面に比べると扱われ方が違います。ご先祖さまは、丁度私達の背中の様なものです。
日常私達は顔や手など目につく所ばかりを、自分の体と意識しています。でも背中がしっかりと後ろから自分の体を支えてくれているのです。
自分の背中や後ろ姿を直接見る事は出来ませんが、確かに無くてはならないものです。見えなくても気づかれなくても、催促もせず不満も言わず、背中は黙って後ろからそっと私の毎日を支えてくれています。私達の命は、この様に目に見えないけれど、無くてはならない沢山のお陰さまに支えられているのです。この見えないお陰さまの代表、それが御先祖で私の命の源なのです。仏教は、あらゆるお陰さまに感謝する心を養ってくれるのです。ですから、命の源である御先祖様を敬っているのです。御先祖様に感謝して、今あるこの命を大切にして、毎日を暮らしましょう。」とお答えいたしました。

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