曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

敬う心 [No,1639 H23年12月26日〜12月31日]

岐阜県恵那市 宗久寺住職 松本広英 老師

日本には、縄文時代の頃から、「惟神(カンナガラ)」という、全ての物には、皆、神様が宿っているという信仰がありました。そこに仏教が融合をしました。仏様の教えも、「悉有仏性」といい、この世のすべてのものは、皆仏様。仏様がそれぞれに、色々なお姿をし、働きをしていると説かれました。
 私どもは、古くから、すべてのものを神様、仏様として、敬うことによって、お米一粒でも粗末にしない。物を大事にすることや、慈しみ、思いやりの心を持って人に接することの大切さを学んできました。
 今は、大変に物の豊かな時代になり、便利な世の中になりましたが、その反面、人間関係が希薄になったともいわれています。あれも欲しい、これも欲しい、もっと欲しい、何でも自分の思い通りになる、思いどおりしたい、そんな自己中心的な、心が蔓延しているようにも感じられます。
 動物の世界には、弱肉強食という構図があります。しかし、自分が満腹になれば、それ以上に他の者の命を捕ることはありません。どうも人間はついつい暴走してしまうところがあるようです。アクセルを踏み込んでスピードを上げれば、上げるほど、それに見合った性能を持つブレーキが必要になります。
 俺が、私がという、見方や考え方をしていれば、他のものに手を合わせるという気持ちにはならないでしょう。
 すべてのものは、皆、神様、仏様。
 敬うことによって手を合わせる事が出来ます。手を合わせて喧嘩をすることは出来ません。仏様の前で手を合わせばウソをつくことは出来ません。
 他の者を敬い、手を合わせることによって清らかな、正しい心に立ち返って行くことが出来るのです。これも人間が生きてゆくための素晴らしい智慧ではないでしょうか。

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