曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

利行は一法なり [No,1643 H24年1月23日〜1月29日]

愛知県東海市 神昌寺副住職 柴田昌法 師

先日、私が電車に乗っていた時の出来事です。とある駅で電車が停車しますと、お母さんと幼稚園児くらいの小さな男の子、二人連れの親子が電車に乗ってこられました。しかし、電車は大変込み合っていました。席は一つしか空いていません。すると、小さな男の子がお母さんに、「ママ、どうぞ」とお母さんに席を譲ったのです。お母さんはニコリと微笑み、「ありがとう」と言って席に着きました。そして、そっといたわるように自分のお腹に両手を添えました。お母さんは、その大きくなったお腹の中に新しい命を宿しているようでした。小さな男の子は、お母さんの体とお腹の赤ちゃんを気遣い席を譲ったのです。
混雑した電車内でしたが、私を含め、周りの人の心の中に、まるで春の爽やかな風が吹き込んでくる、そんな出来事でした。私は心の中で目の前で母親と楽しそうに話す小さな男の子に「こんなにも暖かい気持ちにさせてくれてありがとう」と手を合わせました。
このように人が誰かを思いやる行為を「利行」と申します。私たちはこの利行を積むことで自分の心の中に仏さまがいるんだ、と自覚できます。そして、小さな男の子のお母さんへの利行が、周りの人の心を暖めたように誰かが愛する人を慈しむ光景を目にする、それだけで仏さまが私たちの心の中を暖かく照らしてくださるのです。日常生活で他人をいたわる小さな一つ一つの利行が周りの人々の心の中に優しさを育んでいきます。
皆さん、日々の生活において些細な事で構いません。家族、友人、あなたの大切な方々をいたわり慈しんであげてください。

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