曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

鬼は外、福は内 [1645 H24年2月6日〜2月12日]

三重県伊勢市 西方寺住職 西脇章弘 老師

『鬼は外、福は内』2月3日の夜、どこの家からもこうした大きな声が聞こえ豆がまかれます。節分の豆まきでは、掛け声にもあるように豆を撒くことにより鬼を追い払い、また柊の枝に鰯をさしたものを飾ります。柊のとげ、鰯の臭いで鬼が近寄らないようにする為です。そして自分の年の数だけ豆を食べ、今年一年の健康と幸福を願います。
 ところで節分とは2月3日だけではありません。季節の始まりを示す立春、立夏、立秋、立冬の前日はいずれも季節の分かれ目として節分です。つまり年に4回ありますが、いつの頃からか2月3日だけを節分と呼ぶようになりました。
 さて、豆まきで追い払う鬼とは何でしょうか。スーパーマーケットなどで売っています福豆にも角のはえた鬼のお面が付いています。しかし、私は鬼とは自分の内にひそむ鬼のことだと思います。人は自分の幸せを願うあまりに、それが満たされないと欲望をあらわにして、人の心にひそむ邪悪な心が鬼と化してさまざまな恐ろしい行動に出ることがあります。近年ニュースで見られる悲しい出来事も後を絶ちません。これも自制のきかない人間の内なる鬼による行いでしょう。昔の人々は、鬼を人間の欲望の化身としてもとらえています。
 仏教において克服すべきものとされる最も根本的な三つの煩悩を、『貧、瞋、癡』といい毒に例え三毒といいます。貧とは、むさぼり、あるいは必要以上に求める心。瞋とは、怒りの心。癡とは、真理に対する無知の心、おろかさのことです。三毒は根本的な煩悩でありどことなく湧いてくるような思いのものです。なかなか消し去ることはできません。私たちに出来ることは、生まれながらにして己の中に三毒を持っていることを自覚し、恐ろしさを認識することです。私たちは常に自分という人間の弱さ、危うさを自覚し三毒を取り除こうと努力、精進することが大切です。
節分の時に叫ばれる『鬼は外』という言葉には、人の心にひそむ鬼を追い払い、幸福になろうという願いがこめられているのではないでしょうか。

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