お寺で生まれ育った私にとって、境内は絶好の遊び場でした。裏山には竹林があり筍掘りやドングリ拾いをして、四季の移り変わりを味わいながら育った記憶があります。気付くと、お寺の境内には良く“松”が植えられております。「松は剪定したり、手入れをしないと枯れてしまうから大変なんだよ。」という大人達の会話を聞いて「そんなに大変なら植えなければ良いのに。」と疑問に思ったこともありました。
そんな私も成長し、僧侶になる決意をした時に「松に古今(ここん)の色無(な)く、竹に上下の節(ふし)有り」という禅語を師匠から教えていただきました。有と無、古今と上下の対比をもって、仏教の妙理を示したという解説は良く理解できませんでしたが、「竹は節が有るから倒れない。竹のように真っ直ぐ生きなさい。」という言葉だけは覚えております。
私たち僧侶も沢山の儀式を経験しながら、一人前の僧侶として成長していきます。仏のみ教えを信じ、仏の徳を身に具える得度式から始まり、法戦式・晋山式。そして、お釈迦さまのお弟子となり、真の仏教徒としての自覚を持ち、深い信仰に根ざした生活を送る“戒”を受ける授戒会など。一つ一つの行事が自分の節となり自身の成長の証として刻まれている気が致します。
皆様がそれぞれの節を振り返った時に、沢山の方々のお力添えがあったのではないでしょうか?
儀式は一人では成り立ちません。ご先祖様やご両親・親類縁者、陰で支えてくれる人や、普段は嫌っている人まで・・。多くの方々のお力添えがあって成り立つものです。儀式を通じて感じる“感謝の心”から人は周りに気配りが出来るのではないかと最近感じております。
竹も同じように節から枝が伸びていきます、私たちも人生の節目の儀式を大切にしながら、しなやかで真っ直ぐ成長できれば有り難いですね。
新しく芽を出す筍の為、清風を起こせるように・・
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