曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

仏道にいたる生活 [No,1651 H24年3月19日〜3月25日]

静岡県伊豆の国市 随昌寺住職 雨宮清明 老師

「暑さ寒さも彼岸まで」という言葉がございます。生まれては死に、また生まれ変わり、絶えず繰り返す迷いの世界。こちら側の岸「此岸」というのに対して「彼岸」とは迷いを脱し生き死にを越えた向こう岸、お悟りの世界仏教の理想世界のことをいいます。
 春、秋のお彼岸を迎える度に思う事は、この国に生まれて本当によかったなという事です。四季に恵まれ、水がきれいで緑豊かな自然、いつまでも大切にしていきたいとあらためて思います。お彼岸とは、日本独自の仏教行事で春分、あるいは、秋分の日をお中日とした7日間、特に仏教の教えに適った生活をしましょうという、いわば仏教週間なのです。この3月のお彼岸では思い起こす事があります。昨年3月11日東日本大震災により、苦しみの中にいる多くの皆様の事を思わずにはいられません。皆が少しでも早く幸福に暮らせる様に心より願っています。
 曹洞宗の大本山永平寺を開かれた道元禅師様は、正法眼蔵仏教の巻の中で「修行の彼岸へいたるべしとおもふことなかれ、彼岸に修行あるがゆゑに修行すれば、彼岸到なり」とお示しになられました。彼岸到とは悟りが実現していることです。修行を積んで彼岸(悟り)に至ると思ってはならない。彼岸のところに修行があり、悟っているからこそ修行が出来るのだというお示しであります。
 自分が修行する足下に彼岸(お悟りの世界)が広がり、仏の道を歩む事が悟りの歩みなのです。それが彼岸の実現だと思うからです。遠い世界に彼岸を求めるのではなく現実の生活の中に修行する私達。そこに悟りの実現として彼岸があるのです。今は亡き永平寺の宮崎禅師様は、「仏教、仏の教えは大切であるが、仏道、仏が示された道を歩む事修行が大切である」と常に説かれておられました。皆が、幸せにある様に願う暮らし。人と人とが大事に思い合う生活。このお彼岸ではその事の大切さをあらためて思いました。

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