曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

甦り(よみがえり) [1658 H24年5月7日〜5月13日]

愛知県日進市 妙渕寺住職 森川幸雄 老師

誰もが知ってる花さか爺さんのお話が、実は仏教説話であることはあまり知られていません。枯れ木に花とは、心が潤い花が咲くことを表しています。
愛知少年院の教誨師を拝命して12年の歳月が経ちました。構成して社会復帰した者、また、戻って2度目の少年院生活を送る者。様々な少年を見てきました。少年たちは誓いと懺悔を胸に日々暮らしています。
ある時、個別教誨した少年からこんな質問を受けました。「本当の更生とはなんですか。指導の法務教官の先生方も、人によって温度差を感じます。言われたことを真面目に只コツコツと行っていれば更生出来ますか?」。彼は真剣な眼差しで私の顔を見ています。難しい質問です。私はこう答えました。「更生とは、心の中に望みと感謝が持てて、貴方が生きる力に目覚めた時をいうと思う。なぜなら、更生という字を横に繋げると、甦り(よみがえり)という字になる。貴方なら何時かそれが解る時が来ると思う」。少年は笑みを浮かべていました。少年達はこの施設で多くの人に支えられ、前を向いて歩くことを学びます。
道元禅師様のお言葉に次のようなものがあります。
<後日を持って行道せんと思うことなかれ>
ただ今日今時を過ごさずして、日々時々を勤べきなり
時期が来たから始めるのではなく、一刻一刻を精進するのだと。また、こうもお示しになっています。
 <仏道を行じる者は、命を惜しむことなかれ 命を惜しまざることなかれ>
終戦まで愛知少年院の場所には、旧海軍名古屋航空隊がありました。戦争も末期を迎え、航空隊の養成所を終えた少年たちも、日本の敗戦が色濃くなってきたことを感じていました。死を覚悟した彼らは飛び立つ前に、この地に桜を植えました。自らの命の証として、思いや願いを込めたのでしょう。
春の光とともに満開の桜は、少年院の子どもたちの心を包みます。花は少年たちに伝えます、命の尊厳と美しさを。願わくは若者たちよ、心に光を持ちて、真っ直ぐな道を歩まん事を。

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