曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
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「一切の顛倒(てんどう)から遠く離れ」 [1659 H24年5月14日〜5月20日  ]

愛知県豊明市 長盛院住職 日比野光成 老師

般若心経の中に「遠離一切顛倒夢想」という一文がございます。
この中の「顛倒」(てんどう)とは、ひっくり返るという意味で、転ぶことではなく、真実とは逆にとらえる、という事なのです。その「顛倒」には、八つの誤った見解があるとされています。

1、世の中の無常さを受け入れず、何も変わらないと信じる事。
2、長い目で見れば苦しみの原因となるのに、今が楽しければそれでいいと思う事。
3、我に、とらわれて身動きが取れなくなる事。
4、物質の上辺だけを見て素敵だと判断する事。
この四つの考え方を誤った認識として、さらに否定する事も「顛倒」とされています。
5、世の中を否定し、自暴自棄になる事。
6、心身の健康を損なうような修行をする事。
7、虚無主義に落ち込む事。
8、不浄なものを見極めるべき修行を誤解して行う事。
とされています。

この八つの「顛倒」は、お互いに両極端であります。この両極端の中間が、ある一方への偏りを戒めた「中道」と言われ、仏教では「中道」こそが、涅槃という苦しみのない世界への道とされています。
このような考え方は、私たちの日常生活にもあてはまる事だと思います。
物やお金に執着しすぎていませんか?
今だけの楽しみばかりを考えていませんか?
自分だけの事を考えていませんか?
本質を見ようともせずにいませんか?
世の中を否定しすぎていませんか?
自分の為、人の為に健康を損なっていませんか?
現代風に考えますと「中道」の教えは、何事もやりすぎはよろしくない。何事もほどほどにと、言われているような気がします。しかし、すぐに「中道」の教えを実践することは、簡単ではありません。
私たちは、日頃の生活ができる事に感謝をし、誤った見つめ方や行いをしないよう、
時には自分自身を戒める気持ちこそが、一番大切なのではないかと思います。
私自身も、真実を逆にとらえる一切の「顛倒夢想」から遠く離れ、真実を正しく見ることのできる
「中道」を目指したいと思います。

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