曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

「知ること」と「行うこと」 [1663 H24年6月11日〜6月17日]

愛知県豊橋市 満目院住職 小原泰明 老師

情報化社会、と言われるようになって久しくなりました。
インターネットを利用する人は、日本人の実に78%にもなりました。
そんな情報化社会に生きる私たちは、知りたいことを僅か数分で調べることもできます。
それは仏教の事柄についても例外ではありません。
その気になれば、だれでも、もしかしたら僧侶以上に仏教に対しての知識を得ることができるかもしれません。知りたい、と思ったときに分厚い辞書や参考文献にあたらずとも、意味を調べ、知識を得ることができるからです。
今では、法話ですら、インターネット上で発表しているお寺もあります。
さて、ですが、知ること、それだけが果たして無上の価値でしょうか?
知ること、それ自体は良いことでありましょう。もちろん、仏教的な知識を学ぶことは、仏教に触れる良きよすがとなります。

しかし、知っていることだけに慢心して、仏教を理解したつもりになる、こうした方々が実に大勢いるように思います。そして、私たちはともすれば、情報化社会の中で“知っている”ことだけが、重要なことだ、と知らず知らずのうちに錯覚していないでしょうか。

今から申し上げるお話はとても有名です。漢詩でおなじみの白居易のお話です。白居易は仏教の知識も相当にあったと伝えられています。
ある時、白居易が鳥窠道林という和尚に「仏教で一番大切なことは何か?」と問うと、「諸悪莫作、衆善奉行…つまり、悪いことはするな、良いことをせよ」と答えられました。
そんな当たり前のことを言われた白居易は、すかさず「そんなことは3歳の子供でも知っている」とやり返します。仏教を勉強していた白居易にしてみれば、こんな簡単な答えは、馬鹿にされたと憤ったのかもしれません。
さて、これに鳥窠道林はどう答えたか。「3歳の子供でも知っているが、80歳の老人でもこれを実行することは難しい」と答えます。それを聞いてぐうの音も出なかった白居易は、この後、道林和尚に参禅することになります。
この話で大切なことは、今ここ、この瞬間から、仏教を“行う”、“良いことを実行する”ということではないでしょうか?

どうぞ今この瞬間から、ともに仏道を歩むべく、“仏教を実践する”これを目的にして参りましょう。

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