皆様よくご存知の「あいだみつを」さんのことばに「百円玉ポンとなげ入れて手を合わす、なんと願い事の多いことか」興味深いことばです。そう言われてみると、なるほどと思い当たることが誰しもあると思います。お宮さんにお参りしてもまずお賽銭をなげ入れ、拍手をして、頭を下げるとやはり、色々な願い事が頭に浮かぶものです。家内安全、交通安全、病気平癒、心願成就等々、考えてみれば次から次へと出てくるものです。ある人はこれは願い事としてではなく、「私はこのように誓約したします」という誓いのことばとして受け止めるのが良いのではないかとも申されますが、なるほどこれも一理ありうなずけます。
もう一人仏教者として有名な「ヒロサチヤ」さんがおられます。東京の大学へ入る前までは、大阪のお祖母さんの家にあずけられていました。このお祖母さんは、とても律儀な信仰心の厚い方のようです。「ヒロサチヤ」さんの子どもの頃、朝晩必ずお仏壇にお参りするよう申し渡されました。そして、仏様に決して願い事をしてはいけません、ただ「ありがとうございますの一言だけ言いなさい」と教えられました。朝起きると顔を洗い、口をそそぎ仏壇にお参りして、線香を立て、鈴(リン)を一つ鳴らして「ありがとうございます」とお参りをして、初めて朝のご飯が頂けたそうです。夜はまた、寝る前に必ず仏壇にお参りをして、やはり「ありがとうございます」の一言だけ言ってやっと床へ入れたそうです。ところが、時々その言葉を忘れた頃に「今朝はどのようにお参りをしたのか」と突然尋ねられたそうです。そこで「ヒロサチヤ」さんはもうすっかり大事な言葉を忘れ、学校の成績のことで頭が一杯だったもので「はい、今朝は今日は学校で大事な試験があるので、何とか百点がとれますようにとお願いしました」というと、お祖母さんは「そんなことは教えていない。もう一度お参りしなおしなさい」と怒られたそうです。しかたなしにもう一度、仏壇の前へ座って合掌し、「ただ今の願い事は全部取り消します。ありがとうございます」と申されたので、ようやく朝食につけたそうです。
これが後に仏教学者として有名になった大きな機縁になったのではないでしょうか。
後日お参りを二つに分けて、一つは「請求書のお参り」、もう一つは「領収書のお参り」と述べられておられますが、実に明快で解りやすいことばです。常に頭にかけておきたいものです。
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