曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

人として生きるということ [1690 H24年12月17日〜12月23日]

三重県松阪市 浄眼寺徒弟 永谷達哉 師

今から約137億年前、宇宙でビッグバンという大爆発が起こり宇宙空間が誕生し、約46億年前に地球が誕生したと言われています。そして、生命は今から約40億年前に海で誕生し、人類は約400万年前に誕生したのだそうです。今、生きている私達のこの「命」というものは、このような長い歴史の中で幾多の困難を乗り越え、連綿と受け継がれてきた尊いものであり、今私達が生きているということはまさに奇跡であると言っても過言ではありません。そして元を辿れば我々は一つであったことがわかります。

約2500年前に仏教を開かれたお釈迦様はこの地球上に存在するものは全て縁によって繋がっており、常に変化していくものであると説かれました。それは森林に生い茂る草木であれ、空を飛んでいる鳥であれ、この地球上に存在する全てのものに無縁なものなど無く、常に一定の形であるものなど無いということなのです。そして、全ての命は例外なく命の上にしか存在しません。我々の命は10分程息をとめているだけで、または10日程飲まず食わずの状態でいるだけで消えてしまう非常に脆いものです。つまり我々は生まれながらにして病にかかっており、そしてその病を治療する為に他の命をいただきながら自分の命を保っているのです。

約750年前に曹洞宗を開かれた道元禅師様は仏道修行において食事を摂るということは重要な修行であり食事の前にはこう唱えるべきであると説かれました。「今、目の前にある食事の経緯を辿り感謝をし、自分はこれを頂くに足る行いをしてきたかと自らを顧み、心と体を健康に保ち、仏道修行を成就させるためにこの食事を頂きます。」と。

生物学的に言うと人間は地球上で最も進化した生物であると言われています。他の動物にはない知恵を持ち、言葉を操り、文明を築き発展してきた人間。しかしその反面、人間は他の動物には無い欲望と苦しみを抱えています。そして欲望を満たし苦しみから逃れたいがために大事なことが見えなくなってしまっています。欲望を満たす為に食事を摂り、便利な生活をしたいがために他の命を脅かし、遂には自分たちの母体でもある地球までも破壊しようとしています。
はたして今の人間は本当に最も進化した生物なのでしょうか。互いの命の尊さを感じ、今生きていることの価値に気付き、自分を生かしてくれているすべての命への感謝を忘れず、毎日を決して無駄には過ごさないと心に誓って生きていく。こういったことが当たり前に出来てこそ本当に進化した生物と呼べるのではないでしょうか。

他の生命や地球を破壊することも守ることも出来るのが人間です。自分達に与えられた使命をもう一度考えることが今求められているのではないでしょうか。

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