困っている人がいたら思いやりのある言葉をかけなさいとよく聞きます。人に言葉をかける時について、曹洞宗大本山永平寺を開かれた道元様は「物を言う前に三度よく考えてから言うがよい。」と示されております。最近、このお示しから、人に言葉をかける時の「思いやり」ついて深く考えさせられたことがありました。
私は毎月、ある老人ホームにボランティアに行っていますが、そこに初めて訪れた時のことです。入居者に佐藤さんという車いす生活の方がいらっしゃるのですが、私はその方と仲良くなりました。佐藤さんは毎日、隣のお寺にお参りするのが習慣だそうで、私も一緒にお参りすることにしました。二人でお寺に向かうとお寺の入り口には段差があったので、私は、良かれと思って車いすごと持ち上げようとすると、佐藤さんは寂しそうな顔をして「自分でできるからいいよ」と言われ、自力でお寺に上がられたのです。それを見て私は背筋が凍りました。人を傷つけるのは簡単だなと思わされたのです。
私はなぜこんなことをしてしまったのでしょうか。それは、辞書に載っている「思いやり」という言葉の意味を理解しただけで、まず始めにしなければならない、佐藤さんの心の叫びに耳を傾けようとしなかったからです。私がしたことは、ただのありがた迷惑でした。
これがあり、今では「何かお手伝いする事ありますか」と尋ねるようにしております。すると「何かあったら言うね。いつもありがとう」こう言って、自然と笑って応えてくれるようになりました。その笑顔を見るといつも心がほっとします。
言葉をかける時にはしっかりと相手のためになるか考えてから言わないといけません。軽率な一言で相手を傷つけてしまうからです。人生は努力や我慢の連続ですが、誰もがその現実を受け止め今を懸命に生きています。ここで大切なのは、まずはそうした姿に敬意を示し誠実に向き合うことなのです。ひとを慈しみ、人の悲しみを自分の悲しみとして受け入れる。この慈悲の心こそが本当の「思いやり」であり、私たちに安らぎを与えてくれるのです。誰に会っても自然と笑みがこぼれ、心がほっとできる関係っていいですよね。いつでも、どこでも、誰にでも、この「思いやり」の心を持って接していきましょう。
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