「時は去る 人はゆく さびしくとも それが人生である
来年という年がくる 目をかがやかせ 両手をひろげて待とう」
祖父のノートの片隅に書いてあった言葉です。祖父は昨年11月、82歳でこの世を去りました。私たち孫をとても大事にしてくれた祖父でした。その祖父の部屋で、ふと見つけた1冊のノート。そのノートの1ページに、誰の言葉かは分かりませんが、今となっては懐かしい祖父の字でそう書かれていました。
時は去る 人はゆく さびしくとも それが人生である
時間はとどまることなく流れ、大切な人との別れが必ず訪れます。無常というその道理を分かっていたつもりでも、やはりそれは大変さびしく辛いことです。しかし、自分だけではない。他の誰もが、そして他でもない祖父自身もまた、そのような人生を歩んできたはずです。
来年という年がくる 目をかがやかせ 両手をひろげて待とう
戻らない時間を想い、いつまでも立ち止まってばかりいるのではなく、新しい未来に希望を抱き、日々を精いっぱい生きよう。祖父もまた、そのように強く人生を歩んできたのです。
別れの悲しみの中で出会ったノートの片隅、その懐かしいボールペンの青い字を通して、私は亡くなった祖父に出会い、勇気づけてもらいました。別れを正面から受け止め、前向きに生きていく力を、その言葉を通して祖父から分けてもらいました。
大切な人と別れるのは、さびしくて当たり前です。そして大切な誰かとも、いつか別れなければならない。それが人生なのです。だから、さびしがったっていい。ただ、さびしさに埋もれてしまうのではなく、明日に希望を持って、今日一日を精一杯つとめければならない。それがこの後も生きていくもののつとめなのでしょう。
さびしくとも、それが人生である。無常に生きる私たちは、その無常を受け止めて生きるよりほかありません。しかし、私たちにはその力がちゃんと備わっているのです。だから安心して、精一杯生きていきなさい。今の私には、祖父がそう教えてくれている気がしてなりません。
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