私たち仏教とは死を迎えますと葬儀を致します。葬儀は戒を授け佛になる、そして縁者、友人等とのお別れの大切な儀式であります。しかし、その後の中陰、初七日(しょなのか)から四十九日までの期間がむしろ葬儀よりも大切に思えます。ご家族にとって故人は何十年も生活を共にした大切な人でした。急に亡くなられたことを頭の中で整理するのにも日にちがかかります。少しずつ自分に納得させていかなければなりません。佛様も初七日、二七日(ふたなのか)と、学生が一年ずつ進級していくように佛の世界へのぼっていかれるのです。
佛の世界はよく蓮に例えられます。蓮の花は泥の中から出て、泥とは全く想像を絶する美しく香(かぐわ)しい花を咲かせます。つまり、泥の世界は私たち、娑婆の世界を表し、喜怒哀楽様々な事柄、感情が入り混じった世界であり、佛の世界は美しい悟りの世界であります。皆さまも佛様を見られると蓮の上に立って居られたり、坐って居られるのに気付くことでしょう。蓮の花は一本の茎で泥の世界と繋がっているのです。私たちはこの茎を通じて、娑婆の世界から、線香を焚き、蝋燭に火をつけ、花を上げ、御膳を変え、お経を唱え、浄行を行い佛の修行を助けようと佛の世界へエネルギーを送り込むのです。
仏遺教経、これはお釈迦様が亡くなられる前に、弟子たちに示された言葉ですが、
「展転してこれを行ぜば、如来の法身常に在(いま)して、而も滅せざるなり」
と、示されております。つまり
「これまで弟子たちに教えた事柄を弟子から弟子へ伝えていけば、お釈迦様の体は滅してもその教えは伝わり、お釈迦様は滅することはない、弟子の心の中に生き続けるんだよ」、
と、示されております。静かに手を合わせ故人の生涯の良きところ、人柄を思いだし教えを自分の心の中に取り入れていけば、故人の徳は次の世代へ受け継がれることでしょう。
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