曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

大切なもの [1714 H25年6月10日〜6月16日]

静岡県 正泉寺住職 梅貝泰文 老師

車でトンネル内を走っている時、ライトを付けないですれ違う車に出くわすことが時々ありますよね。近頃のトンネルは、照明設備も良くなり、昔と違ってかなり明るくなっているから、点灯をしないでトンネルを通過しても、自分からは周りが確認できるので、大丈夫だと思ってしまうかもしれないが、しかし自分の車の後ろから点灯したトラックが走行してきたならば、トラックのライトでハレーションをおこして、対向車からあなたの車が見えなくなる事がありますよね。実に危険な事ですよね。いくらあなたが、「自分は周りが見えているから大丈夫、安全だ。」と思っても、周りの人に危険を感じさせるようでは、本当の意味での自分の安全を守っていることにはならないのです。
仏教を開いたお釈迦様が誕生した時に、「天上天下唯我独尊」と言ったと伝えられています。この言葉の意味は、この世の中で「私(自分)」という存在は、たった一人しかいない尊い存在である。だから大切にしなさい。という意味です。私だけが尊いという事ではありません。あなたの隣にいる人も、この世にはたった一人しかいない尊い存在なのです。だから自分が大切なように、あなたの周りの人も尊び大切にしなさい、ということを説いているのです。それがまた自分を大切にすることに通じるのだ、ということを言っているのです。
先ほどのトンネル内の車の話に戻りますが、「自分からは周りが見えている。だから大丈夫。」と思っていても、相手からは見えにくい状態であったならば、事故につながる危険があるし、もしそのために事故が起こったとしたならば、相手を傷つけるだけでなく、自分もけがをしたり、精神的痛手を被ることになるでしょう。結局、自分を大切にしたことにはならないのです。
私達は、お互いに助けたり助けられたりして毎日を暮らしています。一人ぽっちでは生活が出来ないのです。「人」という文字は、お互いに支え合っている事を示していると言われています。その通りだと思います。親しい人や仲間でなく、今自分の周りの人をも思いやり大切にすることが、結局は巡り巡って自分を大切にしていることになるのです。
「袖すり合うも他生の縁」というではありませんか。

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