今日は大本山永平寺を開かれました道元禅師様が、中国の天童寺でご修行されていた時のエピソードをご紹介します。
ある日の暑い日の出来事です。道元様がお昼の食事を済ませて、廊下を歩きながら外を見ますと、この暑い中笠もかぶらずに椎茸を干している年老いたお坊さんが目に留まりました。よく見ますと全身汗びっしょりです。
道元様は、思わず近づいていってお尋ねすると、このお坊さんは典座といって、食事を作る役目のお方で、年は68歳といわれています。驚いた道元様は「この暑くて苦しい中、あなたが椎茸を干さなくても若い修行僧に頼んでやっていただいたらどうですか。」と申しますと、強い声で「他は是れ我にあらず」(他人にやってもらったのでは自分の修行にならない)とのお答え。それではと思い道元様は続けて「ではもう少し涼しくなってからおやりになったらいかがですか。」と申しますと、「更にいずれの時をか待たん」(そんなことを言うが、今やらないで、いつやる時があるのだ)といわれたのであります。
「他は是れ我にあらず」「更にいずれの時をか待たん」道元様は、68歳というお年にもかかわらず、厳しい修行をされているこの姿に心を打たれ、深く心に思うことがあったと、述べられています。
何事にも、なすべき「時機」というものがあって、それを逃すと二度と出会えないことがあります。今日という一日は、一生のうち一度しかなく貴重な時間です。このお言葉は、私たちの生き方に大きな示唆を与えるエピソードであります。どうぞ、じっくり味わってみてください。
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