曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

伝えるという事 [1724 H25年8月19日〜8月25日]

静岡県 光明院 住職 高橋秀朋 老師

皆さんは、何かしらの習わしを伝え受け継ぐということについて、日頃どのように感じていますか?理由もわからず行っている風習はありますか?何かをする事には、必ずそれをするようになった理由があると思います。
私のつとめるお寺では、枕経の時に、短いお線香三本でカミソリを薫じ、剃髪の儀が終わると、そのお線香の火を消して、ご遺体の胸の上に置きます。ある時、ご遺族から「先ほどのお線香には、どんな意味があるのですか?」と聞かれましたが、私は答える事が出来ませんでした。寺に帰り祖父に聞いてみましたが、亡き曽祖父から、そうするよう教わったというだけで、意味まではわからないそうです。
今はインターネットで検索すれば、ある程度の情報は苦もなく知る事が出来ます。でも、たぶん独特の風習であろう、先ほどのお線香の意味までは書いてありません。「仏法僧の意味で三本なのかな」と推察は出来ても、今となっては、そうするようになった本当の理由を、知る術もありません。
私自身、今の便利な世の中に慣れてしまって、誰かに聞く事、教わる事を、面倒くさいと感じてしまう事が、少なからずあります。しかし、直接伝え聞く事でしか知る術が無い事も、沢山あります。
自分で調べる事も大切ですが、答えが見つからない時は「また今度でいいや」と思わず、誰かに聞いてみましょう。また、教える側の人も「鬱陶しい」と思わず、快く答えてあげてください。そして、その事の本来の意味を知っていれば、同時に教えてあげてください。
自分を頼ってくれるからこそ、質問してくれるのであり、その人が良いと思う事を伝え継いで欲しいからこそ、教えてくれる、この事を忘れず、それをする事の意味を考えながら、お互いに生きて行きたいものです。

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