曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

四人の妻 [1727 H25年9月9日〜9月15日]

愛知県 寶安寺 住職 大塚晃由 老師

お釈迦様の教えに「四人の妻」というお話があります。ある所に一人の商人がいました。その商人は四人の妻をもっていました。第一の妻はいつもそばに置いて可愛がっていました。第二の妻は美人で人と争って取った妻でした。第三の妻は時々会ってほっとする妻でした。第四の妻は埃だらけで働き者で夫のいることさえ忘れているような妻でした。
ところがある時、この商人は旅にでることになってしまいます。今度の旅は長くなるので妻を一人くらい連れて行きたいと思いました。そこで第一の妻の所へ行きました。第一の妻はとても心配してくれましたが、一緒には行けないと言って断られました。第二の妻は美人で人と争ってとった妻です。第二の妻は言いました。私はあなたのことが好きで妻になったのではありません。あなたがとってあなたの妻になったのですからそんな危険な旅には一緒に行くわけにはいきません。そう言って断られました。第三の妻は時々会ってはほっとする妻です。この妻はとても心配して、一緒に行きたいけど行く訳にはいかなかったので、せめて町の外まで送らせてくださいと言って断ります。第四の妻は埃だらけで働き者で、夫のいることさえ忘れているような妻です。とても心配して、私はあなたの妻ですから、たとえ火の中水の中でも一緒に参りますと言って、この商人は第四の妻つれて旅に出ることにしました。
そこでお釈迦様はさら言います。ところで諸君、この商人とは誰か。それはあなた自身です、と。旅に出るとは死出の旅路で、死ねということだ。
第一の妻とは、あなたの肉体です。だから、いつもそばに置いて可愛がっていた。その肉体という妻は来世に行くことはできません。第二の、美人で人と争って取った妻というのは、あなたの財産です。確かにお金は魅力的です。しかしお金というのは来世についてきてくれないのです。第三の妻は時々会ってはほっとする妻でした。それは親族だというのです。親族はとても心配して、一緒に行きたいけれど行く訳にはいかないから、せめて町の外まで送らせて下さいといいます。町の外とは墓地だというのです。親族は墓地までは来てくれても一緒には入ってくれる訳ではないのです。第四の妻は、埃だらけで働き者で、夫のいることさえ忘れているような妻でした。それは「あなたの心」だというのです。あなたの心はあなたの妻ですから、たとえ火の中水の中でも一緒に参りますと言って、この商人は「心」という第四の妻を連れて来世に行ったというのです。
つまり、お釈迦様の言いたいのは、あなたはどんな心を連れて来世に行きますか、ということです。恐怖や迷いや憎しみの心で行きますか。私たち人間というのは感謝と安心と空、無心の心であの世に行きたいものです。

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