曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

私を助けた一言 [1731 H25年10月7日〜10月13日]

三重県 天照寺 住職 朝日耕道 老師

東日本震災の5月に女川避難所に炊きだし支援にお邪魔したとき、被災者の一人と話をしていて、近辺の島からの避難でありもと漁師をしていたとのことで、ここに避難している多くは元漁師の人が多いと聞かされ、どうですか、私たちは三重県から来ていますが、毎日普通に食べていたお魚が食べられなくて寂しくないですか、なとど話し、どうでしょう来月来るときにはお刺身で食べられる魚を持ってきてもいいですか。でも、私たちは調理出来ないので、是非手伝ってください。と約束して帰りました。
早々、三重鳥羽漁協さんにお願いをして、鯛を50匹ほど提供して頂く運びとなり、避難所の代表の方と打ち合わせをして、6月女川2カ所に配る事になり、もちろん女川避難所では 鯛の刺身とあら汁を提供する事となりました。その裏側では騒動が起こっていることも知らずに、調理を担当するのは避難者の漁師さんや、奥様たちでした。調理を始めると、一人の奥さんが、なにやらぶつぶつと文句を言っているのが聞こえて来ました。「自分たちでさばけもしないのにこんな大きな鯛持ってきて」とか「こんな鯛こんな包丁でさばける分けないでしょ」などと、結構いらいらしていたようでした。簡単に思って、被災者の方と交流しながら一緒に炊きだしが出来ると喜んでいたのですが、そうではなかったようでした。気まずい思いの仲大根をきっいると、そばで作業をしていたおじさんがぼそっと一言「何だかんだ言ってもうれしいんだ、こんな立派な鯛の刺身みんなで食えるんだもの本当は嬉しいんだ」
私は、その一言を聞いて、持ってきても良かったと思いました。避難所では、衛生管理常の問題で避難者と支援者が共同で炊きだしをしてはいけないそうです。言葉で伝えなくては伝わらない事はたくさんあります。感謝や、愛情も言葉に出して伝えなくては疑心暗鬼に成ってしまうこともあります。日本人は、言葉に出して伝える事が下手なのかもしれませんが、感謝を込めて「ありがとう」と言われると嬉しいものです。

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