私が枕経に伺ったときのことです。
「もっと優しい言葉をかけてあげればよかった」
母親の亡骸の前で、その方は涙で声を詰まらせながら、小さな声でつぶやきました。
家族で一緒に夕食をとったその夜、皆が眠っている間に、母親は一人息を引き取っていたそうです。けっして仲の悪い親子ではなかったようですが、突然の別れだっために、母親に対する日ごろの自分の言葉や態度を後悔されているようすでした。
私は、涙ぐみながら後悔されているその様子に、母親に対する愛情の大きさを感じました。そして、後悔の大きさは、愛情の大きさなのだと思いました。
私たちは、家族や友人を、思わず言葉や態度で傷つけてしまうことがあります。あとになってみると、「あんなことを言わなければよかった」「あんな態度をとらなければよかった」と後悔することも多いでしょう。
後悔するのは、愛情があるからなのです。そして、きっと後悔したあと思うはずです。「今度はもっと優しい言葉をかけよう、もっと優しく接しよう」と。
もしかすると、同じ後悔を何度も繰り返すかもしれません。しかし、その後悔を繰り返しながら、人は人に優しくすることができるようになっていくのかもしれません。
後悔は、自分の生き方を変える力に変わります。わたしたちは、後悔したときこそ、その思いを大切にしなければなりません。後悔は、私たちをより良き生き方へと後押ししてくれる大きな力なのです。
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