曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)
たのしみ法話
たのしみ法話

小さな仏様 [1744 H26年1月6日〜1月12日]

愛知県 威音院 住職 中村元紀 老師

 こんにちは、突然ですが御布施と言う言葉、馴染みがあるかと思います。お坊さんに法事のお礼としてお支払いをするものとご想像される方が多いかと思います。
 曹洞宗の管長福山禅師様は、布施とはへつらう事なく見返りを求める事なく、互いに生かし合う生き方であるとお説きになっております。私はこの事からあることを思い出すのです。
 先日友人の家に夕食をよんで頂いた時の事です。友人夫婦、友人の御両親、そして4歳になる娘の雫ちゃんと楽しく談笑しながら食事を頂きました。ふと雫ちゃんを見ると、とても険しい顔をしてキノコを睨んでおりました。
 私がその姿を眺めていると奥さんが「この子キノコ嫌いでねー」と言いました。すると友人が雫ちゃんに向かって意地悪な顔をしながら、「残してもいいんだぞー」と声をかけました。「やだ!!」と雫ちゃんは叫ぶと、一生懸命キノコを食べ終え、「ごちそうさま!」と言うとすぐさま冷凍庫から大好物の6個入りアイスを持ってきました。
 どうやら食事を残さなければアイスを食べていいようですね。すると雫ちゃんは嫌いなキノコをやっとの思いで食べ、得られた大好物のアイスを、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、私と配って周りました。奥さんが「この子お客さん来てるからテンション上がってるね」と私に言いました。大好物なら僕の分はいらないよと雫ちゃんに返そうとしましたが「だめ!お兄ちゃんも食べて!」と言い、雫ちゃんは残り1個になったアイスを食べ「おいしいね!」と私に微笑みました。
 雫ちゃんがくれたこのアイスこそが布施であり、そしてこの雫ちゃんの行為こそがへつらうことなく互いに生かし合う生き方であると、わたしはこの小さな仏様に布施の教えを頂きました。

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