曹洞宗 東海管区 教化センター(禅センター)

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たのしみ法話
たのしみ法話

敬いの心 [1757 H26年4月7日〜4月13日]

静岡県 光明寺 住職 山内彰広 老師

『物の細を論ぜず、物の麁を論ぜず、深く真実の心、敬重の心を生すを詮要と為す。』
福井県大本山永平寺をお開きになられた道元禅師様は、典座教訓の中でこのようにお示し下さっております。
私たちは、一見高価なものには喜び、粗末なものには目もくれない。好きなものは更に欲しいと願い、嫌いなものは不平を言い排除しようとする。日々の暮らしの中で、私たちはついつい本当の価値も分からずに、選り好みをして自分勝手に価値を決めつけ、一喜一憂する生活をしてはいないでしょうか。
 ある時、お釈迦様は弟子の阿難と托鉢をしながら城の門に入ったところ、その城の王様はお釈迦様に食べ物を施こしたり、お釈迦様の説法を聞いてはならないとお触れを出したそうです。街の人々は戸口を閉め、お釈迦様が通り過ぎるのを静かに待ち、息を潜めておりました。一人の老婆が米のとぎ汁を捨てようと表へ出たとき、偶然にもお釈迦様が通りかかったのでした。静かな趣でお立ちになるお姿に老婆は釘付けになり、自然と『敬いの心』を起こし、「粗末なものですが召し上がってください。」と、手に持っていた米のとぎ汁をそっと差し上げたのでした。お釈迦様は米のとぎ汁を頂き、喜んでこの老婆の供養を受けたというのです。
老婆が差し出してくれた一杯の米のとぎ汁の中には、溢れんばかりの老婆の真心が込められていたのですね。お釈迦様が喜んで頂いたのは、米のとぎ汁ではなく老婆の真心だったのではないでしょうか。それは、お釈迦様の老婆への『敬いの心』に他ならないのです。豊かな時代で暮らす私たちだからこそ、大切にしたい心ですよね。

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