お寺の裏に町内のゴミ収集所があります。集めたゴミにカラスや猫が悪戯しないようと、檻のように柵で囲い、ネットが張ってあります。少し前から柵が折れ、壊れてしまい、皆さん少し不便をしているようでした。
しばらくはそのままだったのですが、先日のことです。ある若者が柵を直していました。町内会の当番なのかなと思い「お役目大変ですね」と声をかけますと、「いやぁ、当番ではないんですが、勝手に直しています」と返事が返ってきました。私は法事へ出かけるところでしたので、「申し訳ないなぁ」と思いながらもそのまま出かけました。
法事から帰ってくると、近所の女性がその若者に声をかけていました。「ありがとうございます。前から気にはなっていたのですが、私にはこんな作業は出来なくて」と若者に飲み物を差しだすと、「いえいえ、素人の仕事ですので…」と若者は照れ臭そうにしていました。
その時、私は法事で読んだお経の一節を思い出しました。「ただ彼が報謝を貪らず、自らが力を頒つなり。」誰かに感謝をされたい、労力に見合った謝礼がほしい、などと思わず、自分の出来ることをする。それも布施のひとつであるという教えです。
残暑の日差しの中に立つ二人に、仏様の姿を見ることが出来ました。
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