この法話を聴いてみようと電話をかけた方の中には、いろいろな悩み、苦しみを抱えておられる方もいるでしょう。
私も30数年前まだ会社勤めをしていた頃、仕事の悩み、人生の悩み、さらに近親に相次いで自殺者が出るなどの出来事があり、深い苦悩の闇に落ち込んでおりました。
申し子とも続けられないと退職して、毎日図書館に通って、手当たり次第に本を読み漁ったりもしましたが、闇は深くなるばかりでした。このままではどうしようもないと、もがいていた頃、たまたま通りがかったお寺の掲示板に「参禅会」の張り紙がありました。何度か迷いながら、ある日思い切って禅寺の門をくぐったのです。
週に一回の坐禅会と年に二度の集中的な坐禅修行。各地で行われる禅の勉強会などに参加して、禅の世界に親しんでいきました。そして後に師匠になっていただく和尚さまから「安心して悩め」という言葉をいただきました。これは「有難い事に人間は悩むようにできているんだ。だから、悩む自分をそのまま受け入れて安心して人生を味わっていけばいい」ということでしょう。また「仏道を歩むものは全部いただけよ。選り好みしてはいかんぞ」という言葉もいただきました。
人は自分の好きなものを選び、都合の良い事しか受け入れようとしないけれども、人生そんなにうまくいくのもではない。時には損をしたり、悩み苦しみ悲しみがあります。嬉しい事、楽しい事は少ないのが普通ではないかと思います。苦も楽もすべてが選り好みしないでいただいてこそ、そして、悩み苦しむ自分を丸ごと受け入れてこそ、人生の深い妙味を生きるということではないでしょうか。
あなたも一度お寺の門をくぐってみたらいかがですか。え?私の悩みは解決したのかって?相も変わらず日々様々なことで悩んでおります。安心して悩んでおります。
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