「そこの父ちゃんには世話になったでなあ」というだけの理由で仕事がもらえたという話を聞くことがあります。本人の信用をご先祖が担保してくれたことになります。私の住む地方の田舎は、世間が狭いので、そんなケースも珍しくはありません。
さて、私たちが使っているスマートフォンの一種、iPhoneを発明したアップル社の創始者、スティーブ・ジョブズ氏も同じような意味合いの言葉を残しています。
「知っていると思いますが、私たちは自分たちの食べる食べ物のほとんどを作ってはいません。私たちは他人の作った服を着て、他人のつくった言葉をしゃべり、他人が創造した数学を使っています。何が言いたいかというと、私たちは常に何かを受け取っているということです。そしてその人間の経験と知識の泉に何かをお返しができるようなものを作るのは、すばらしい気分です。」
ジョブズ氏は、日本人の禅僧に師事して坐禅にも打ち込んだことで知られる方です。芸術、文化、技能等に限らず、先人の知恵と努力の上に、現代の社会生活があることをつい忘れがちだと気づかれた人でもあります。
ところで、お檀家さんから、先祖供養をする意義について質問されることがあります。法事という儀式を通じて、家族や親戚縁者が集うことで、故人が残してくださった足跡を振り返るための貴重な場ですと答えています。和尚さんの読経の声に合わせ、一心にお勤めをしてみましょう。故人から受け取った数々のご恩を思いだし、身近な誰かのために何かして差し上げましょう。私たちが人間として生まれた意味を知る手がかりが、きっとそこにあります。
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