「人に迷惑をかけてはいけません」私たちはそう教えられて育ちます。この教えの根底には「何事においても周りへの配慮を欠かさないことが日本人にとっては美徳である」という考え方があり、今もそう教えられることが多いようです。しかし、この教えは仏教ではどうなのでしょうか。
人間は他の生き物と比べて非常に未熟で生まれてきます。生まれたばかりの赤ちゃんは、自分で歩くことも食べることもできません。人間は育児に大変手がかかる生き物なのです。そして、成長して大人になっても、次第に年をとって、だんだんと自分のことを自分でできなくなり、介護などの手助けが必要になる人もいます。また、病気を患ったり、障害を負ったりする可能性もあります。こうして考えると、人間は生まれてから死ぬまで「誰にも迷惑をかけずに生きていく」ことなど不可能と言えるのではないでしょうか。
仏教を開かれたお釈迦様は「人間は一人では生きていくことはできない」という世の中の無常を受け入れ、だからこそ、「支えあって生きていく」ことの大切さを説かれました。
人間は一人で生きていくことはできないということが分かれば、他人に迷惑をかけずに生きていくことはできないということも分かります。生きていれば、自分が気づかないところで、誰かのお世話になっているのです。つまり、誰とでも「お互い様」の関係なのです。迷惑をかけてしまうことを申し訳ないと思いながらもその現実を受け入れ、苦しい時には助け合える関係を築いていきたいものです。
日本では「人に迷惑をかけてはいけません」と教えられますが、お釈迦様の教えが広く伝わるインドでは「あなたは迷惑をかけているのだから、人のことも許してあげなさい」と教えるそうです。
「迷惑をかけながらしか生きられない」そう思うと、周りのすべての生きとし生ける物に感謝ができるのではないでしょうか。
「迷惑をかけてはいけない」ことはありません。迷惑をかけてもいいのです。「お互い様」の心を大切に、生かされていることに感謝をして生きていきましょう。
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