皆さんは自分が望んだように生まれてきましたか?時代、場所、性別、容姿・・・。私はこの時代にこの場所で、この容姿で望んだように生まれてきたという人は一人もいないはずです。
いつまでも美しく若くいたい。元気ハツラツ、十代二十代のままずぅ〜っといたいと思っても人は必ず一年に一歳ずつと歳をとります。また逆に、早く大人になりたい、歳をとりたいと思っても、歳は一年に一歳ずつしか増えていきません。
誰もがいつまでも健康でいたいと思いますが実際は色々な病気をしたり、怪我をしたり・・・。長い間苦しまなくてはならなかったり、突然命を落としたり・・・。
死にたくないといっても例外なく全ての人に死は訪れます。今まで築き上げてきたもの全てを置いて・・。愛する家族や友人、財産、地位、名誉・・・。一切を捨てていかなくてはなりません。また、人によっては、未知の世界という死後の恐怖を抱く方もあるでしょう。死んだらどうなってしまうのか・・・。
このように、生まれてくること、歳をとること、病になること、亡くなっていくこと、
私たちの人生は何一つ思い通りにはならないのです。
お釈迦様は、このことを『一切皆苦』という真理の言葉で示されこの世を裟婆世界と呼び、耐え忍ばなければならないのだと説かれております。
私たちの苦しみはそもそもどこから来るのでしょうか?
それは自我の迷執が原因です。自分の思い、計らいを指し挟んで、思い通りにならない世の中を、思い通りにしようとするからです。
まずは、しっかりと一切皆苦という真理を腹に決めることです。私たちの人生は順境であろうと逆境であろうと“今という結果“です。素直に今を承当していく、うけがっていくことです。不平不満を言わずに、今に手をつけず、因果に安住することこそが 仏道であり、真の安心、仏教の説く救いです。
『大いなるものに 抱かれあることを 今朝吹く風の 涼しさに知る』
昭和の名僧の一人、臨済宗妙心寺派の管長をされた山田無文老師の詠まれた歌です。
今ここに、こうして生かされている自分に気付く、有難いことだと。
あれもある、これもある、そして今こうしてあることのお蔭様を頂戴し、因果に安住して生きていく・・・
今のまんま、救われていくのが仏道であります。
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