良寛さんは江戸時代後期、越後の国、出雲崎で生まれました。良寛さんには心温まるエピソードがあります。子どもたちと隠れん坊をしたり、日が暮れるまで手まりをついていたというものです。それは晩年の良寛さんの姿です。
若いときの良寛さんは人づきあいが苦手で、ひとり静かに書物を読んでいました。修行時代は仏典を読みましたが、それ以前に万葉集をはじめとする日本の古典、四書五経をはじめとする中国の古典、陶淵明や寒山の詩などを学び、そのほとんどを記憶していました。
良寛さんの学識の深さは測り知れません。そんな良寛さんが膨大な書物を読んだのちに掴んだ結論は何だったのでしょう。それは、お釈迦さまの弟子としてお釈迦さまが示された道を歩もうというものでした。端的に言えば、托鉢を生涯の修行として行じていく、これが良寛さんの結論でした。
托鉢を貫いた良寛さんの暮らしぶりは、破れた衣で寒さを防ぎ、薄いお粥で飢えを満たす質素なものでしたが、なにものにもこだわらない自由で豊かな一生を送りました。
振り返って私たちは、心豊かな人生を送っているでしょうか。溢れるほどの物を持ちながら、まだ不足ですか。能力や地位を他の人と比べ、優越感に浸ったり劣等感に苛まれていませんか。何かにこだわって心配し、右往左往して動揺していませんか。そんな心の苦しみを免れたいと思う時、私はいつも良寛さんを思い浮かべます。
人からの評価に迷わず、人を羨むこともなく、子どもに出会えば子どもと遊び、友人が災難に遭えば一緒に涙を流す良寛さんの姿に、私はこころを癒やされます。そして、欲望に振り回されない生き方こそ自由で豊かな生き方なのだと良寛さんに学んでいます。
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