お寺の庭には、小さな水鉢に自分で植えた睡蓮があります。
寒い季節には、葉も花も水に沈んで枯れて、芽吹きの季節になると小さな葉っぱが生え始め、暑さ堪える頃にニョキニョキと一本の細長い茎が伸びて、日の出とともに淡い色の綺麗な花を咲かせてくれます。
それが毎年の楽しみであって、今年もその睡蓮が咲き始めました。その睡蓮を眺めていたら、顔がほころんでいることに気が付きました。
ただ綺麗な花を眺めて、顔が微笑んだ、だけの事なのですが、言葉をしゃべらない睡蓮から言葉以上に伝わるものを感じました。
「不立文字」という教えがあります。文字や言葉を用いずに、心を通して心を伝える以心伝心で、真心を伝え、それでいてそれを掴むという教えです。
言葉を持たずしても、お互いの心と一体になる。そこに真の理解が生まれてきます。
自然の流れの中で、綺麗な花を見せてくれた睡蓮は真心そのものです。それを人に伝えるのに文字や言葉はいりません。文字や言葉を超えたところに真理があるのです。
自分の思いを一生懸命に、心を込めて、身体に表せば、どんなに言葉や文字を用いるよりも通じることがあります。
心からにじみ出る微笑みは、人の心と本当に触れ合うことができ、穏やかになるものです。
微笑みを持つことは、人と自然と共に歩むうえで大切にしたいものです。
| top
| 前のお言葉
| 331
| 332
| 333
| 334
| 335
| 336
| 337
| 338
| 339
| 340
| 341
| 342
| 343
| 344
| 345
| 次のお言葉
|