もう少しで八十を迎えるお檀家さんが、突然の不慮の事故にて他界しました。少し遅く授かった可愛い可愛い大切なお孫さんは、この春幼稚園を無事卒園し、小学校の入学式を楽しみに待っていた矢先の出来事でした。
私もこの方と親しくさせて頂いており、先に亡くなった兄の月命日のお参りにお見えになる度、お孫さんの成長ぶりを顔を綻ばせ乍らよく聞かせてくれていました。その事故の数日前にも、ランドセルをプレゼントした時のお孫さんの喜び様を聞いたばかりでした。
ですから、訃報に驚き枕経へ駆けつけた時には、お悔やみの言葉も思い浮かばない程でした。通夜の日、回向が終わって参列者を送り出した後、私は改めて遺族親族の方達だけの時を求め、葬儀の意義などを話して、故人を偲ぶ時を過ごしています。
その時、一番大好きだったお孫さんが、「お葬式をした後、お爺ちゃんはどこへ行くの?」と、質問をしてきました。
「手を優しくそっと合わせてごらん。左の掌が右の掌に触れているのかな?右の掌が左の掌に触れているのかな? それぞれが触れ合って両手の温もりを感じるでしょ。お互いの温もりは、お爺ちゃんから受け継いだ命の温もり、そして大切な君の命の温もりだよ。遊んでもらった時・寂しかった時・悲しかった時、お爺ちゃんに握ってもらった手の温もりがその中にあるんだよ。お爺ちゃんは、ほとけさまの郷へ行くけど、それは遠い所ではなくて、お爺ちゃんを思い、こうして手を合わせると、この掌の温もりの中にお爺ちゃんが寄り添ってくれているよ。これから、お爺ちゃんが喜んでくれる事、心配しないようにする事をして、この温もりの中にいる『見えなくなったお爺ちゃんとお爺ちゃんから受け継いだ命』大切にしていこうね。左の掌と右の掌の温もりが、君とお爺ちゃんとの距離だよ。お爺ちゃんはどこへも行かない、君にいつでも寄り添っているよ。」
葬儀の日から、常々手を合わせて、真心に見えるお爺ちゃんに語り掛けてくれていると、母親が四十九日の法要の後、知らせてくれました。
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