「消えたい」そう思う苦しみがあります。自信を失い自分を嫌悪し、やがて生じる「消え
たい」という思い。これは私という存在が嘘であって欲しいという願いです。
この場所は自分のいるべき場所ではない。今は自分に相応しい時代ではない。この自分は
本当の自分ではない。だから消えたい。自分を消したい。かつて私もそうでした。泥の中に
いました。
私をすくい上げた言葉があります。「三界唯心」「三界はただ心のみ」三界は世界のことで
す。心はこころと読みますので「世界はこころのありようで変わる」と理解されますが、道
元禅師は「心」に真実という意味をもたされ、「この世界以外に自己が生きる世界はない」
と説かれます。世界とはこの場所、この時、この命。自己の全存在です。自己を生きられる
のは自己のみです。
道元禅師がこう語りかけて下さる気がします。「君にとってあの場所しか生きる場所はな
かった。あの時しか生きる時はなかった。あの命しか生きる命はなかった。あの世界が君の
全てだった。あの世界があったからこそ今の君が生きる世界がある。君が世界を突き放そう
とも世界は君の思いを超えて君を抱きしめるだろう。君の命は君の思いを超えて君を生か
すだろう。これまでもこれからも」と
「三界唯心」この言葉は私に、自身に対して愛情や憎しみなどの感情を離れた不思議な愛
おしさを抱かせてくれます。
今はこう信じています「生きてて良かったと思える瞬間も、そうでない瞬間も等しく生
きている瞬間なのだ。どれもかけがえのない自己の命が輝いている瞬間なのだ。それに気づ
くことができれば、今生きていることを実感し、こうありたい、ありたくないという思いを
離れて、この人生しか自分にはないと思いを定めることができるのではないか」と
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